長岡空襲から80年

体験画と語る 平和への願い

萩原良彦さん画「焼夷弾の破裂する長生橋を渡る親子」。絵の中央には大島方面へ逃れる萩原さんと家族が描かれています

 昭和20年8月1日の長岡空襲。長岡市は市街地の約8割が焼け、多くの尊い命が奪われました。
 あの日から80年―。
 6月7日に開催した「長岡空襲の体験を聞く会」で、萩原良彦さんが自ら描いた体験画とともに、空襲の惨状と平和への想いを語りました。

【問】庶務課 ☎ 0258-39-2203

萩原 良彦(はぎはら よしひこ)さん(85歳)
5歳の時に空襲を経験。現在は所属するムービーサークルで、歴史などをテーマにした映像作りを楽しんでいます。

まちが焼けてなくなり長生橋の上から駅が見えた―

 空襲当時、私は両親と妹の4人で長生橋のそばに暮らしていました。
 エアコンも冷蔵庫もなかった時代。氷水で冷やした手ぬぐいを体に当てて涼をとり、親がうちわであおいでくれる風が何よりも心地よかった。不便だけど穏やかな毎日―それが一瞬で崩れたのが、あの夜でした。
 ヒューンヒューンと空から不気味な音がして、やがて焼夷弾(しょういだん)が雨のように降り始めました。警防団員だった父はすぐに近所の火の見櫓(やぐら)へ。母は泣き叫ぶ妹を背負い、突然のことに混乱している私に防空頭巾を被せ、着の身着のまま外に飛び出しました。
 訓練通り平潟神社の防空壕へ逃げ込もうとしましたが、辺りはすでに火の海。燃え上がる炎が行く手をふさいでいました。
 そこへ火の見櫓から戻ってきた父が叫びました。「長生橋を渡って大島へ逃げれ!俺も後から行く!」。私たちは父の声に背中を押され、一目散に橋を目指しました。
 泣きながら走る子ども、荷物を抱えた大人、誰もが必死でした。私は泣きべそをかきながら、母に引っ張られるようについていきました。涼しいはずの夜の川風は熱く、夜空は赤黒く煙っていました。頭上では爆撃機B29の編隊が、次々と爆弾を落としています。そのたびに身をかがめて、また走る...その繰り返しでした。橋の上にも焼夷弾が落ち、直撃したのか亡くなっている人もいました。人であふれ、思うように進まず、橋を渡るのにどれだけ時間がかかったのか、まるで見当もつきません。
 ようやく橋を渡り終えた時、市街地は真っ赤に燃え上がっていました。そのまま大島地区の母の実家に身を寄せ、家族4人無事でした。そこで一杯の井戸水をもらった時、子どもながらに「助かった」と実感しました。
 後日、父に連れられて戻った家は、跡形もなく焼けていました。家の裏手の稲荷様の下に埋めていた米も炭になっていました。何より衝撃だったのは、長生橋の上から長岡駅が見えたこと。いつもは建物に隠れていた駅舎が、まちが焼け落ちたことで、ぽっかりと見えていたんです。「ああ、まちが本当に消えてしまったんだ」と思いました。
 あの日の記憶は、体験画として描き残しています。平成18年に戦災資料館が体験画を募集しているのを知り、当時のことを知ってほしいと思って筆を取りました。若い人にも見てもらいたいと思い、近所の公民館にも展示してもらっています。
 あれから80年。あの夜の記憶は今も鮮明です。爆弾の音、川を越えて届いた熱、泣き叫ぶ声。どれも頭から離れません。親戚の家族は安全だと信じて逃げ込んだ防空壕で命を落としました。もし私たちが訓練通りに防空壕に逃げていたら、橋を渡るのがほんの少し遅れていたら...。運命を分けたのは、わずかな時間の差でした。
 私は、戦争が嫌いです。平和な世の中が一番いい。この私の人生の記録が、戦争の事実を知るきっかけとなり、今の平和がどれだけ貴重か感じてもらえたらうれしいです。

萩原良彦さん画
「火の海の長岡」

長生橋の東詰から市街地を見つめる萩原さん。「この先に広がる景色全てが焼け野原だったんです」と当時を振り返ります

8月 平和を祈る行事

【1日(金)】

戦災殉難者慰霊祭
時間 = 午前6時から 場所 = 平潟公園(表町1)

戦災殉難者墓前法要
時間 = 午前7時から 場所 = 昌福寺(四郎丸4)

2025平和祈願祭〜空襲で亡くなった子どもたち・ 教職員と市民を追悼する集い〜
時間 = 午前8時〜8時30分 場所 = 平和の森公園(本町3)

長岡市平和祈念式典
時間 = 午前9時〜10時 場所 = アオーレ長岡

鎮魂たむけの花
時間 = 午前10時〜午後4時 場所 = アオーレ長岡

ながおか平和フォーラム
時間 = 午前10時15分〜11時45分 場所 = アオーレ長岡 内容 = 中学生平和作品発表、長岡出身の俳優・星野知子さん(写真)による長岡空襲体験談の朗読など

市民におくる映画の集い
時間 = 午前10時15分〜11時40分 場所 = アオーレ長岡 内容 = アニメ映画「クロがいた夏」上映

柿川灯籠(とうろう)流し〜未来へ繋ぐ灯り〜
時間 = 午後6時30分〜9時30分(セレモニーは6時30分から) 場所 = 柿川(一之橋〜追廻橋付近)

慰霊の花火「白菊」の打ち上げと梵鐘の打ち鳴らし
時間 = 午後10時30分から


【31日(日)まで】

長岡空襲殉難者遺影展・戦災住宅焼失地図展
時間 = 午前10時〜午後4時 場所 = 長岡戦災資料館


歴史文書館常設展「手紙が語る戦争―戦地からの 手紙、戦地への手紙―」
 従軍中の兵士が家族に送った手紙、故郷の家族が戦地の兵士へ送った手紙などを展示します。
日時 = 8月30日土まで 
【問】同館 ☎ 0258-36-7832